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自動車&建設業界のビジュアライゼーションに革新を

最大64コア AMD Ryzen Threadripper PRO プロセッサーを搭載し、
絶対性能とコストパフォーマンスを両立したワークステーション「ThinkStation P620」。

同製品は、ハイパフォーマンスな性能が要求されるビジュアライゼーションにおいて、どのようなインパクトをもたらすのでしょうか。放送局やCG制作会社、自動車メーカー、建設業界などに対して、さまざまビジュアライゼーションのソリューションを提供する株式会社エヌジーシーのXR担当者が同製品のパフォーマンスを評価しました。

レノボの担当者とともに、その結果から見られる自動車や建設業界への影響を語ります。


ハイエンドDual CPUマシンを凌駕する「ThinkStation P620」

エヌジーシーでは、レノボのデスクトップワークステーション「ThinkStation P620」(以下、P620)の性能を評価するべく、自動車業界、建設業界におけるビジュアライゼーションに関して、レノボの従来機種(デュアルプロセッサー搭載のワークステーション)との比較検証を以下の通り実施しました。

メインワークステーション:Lenovo ThinkStation P620

  • AMD Threadripper PRO 3995WX @ 2.70GHz (64cores, 32MB L2 / 256MB L3)

  • 128GB DDR4-3200 MHz RDIMM ECC

  • NVIDIA RTX A6000 48GB GDDR6 PCIe 4.0

  • 1TB M.2 PCIe 4.0 NVMe x 4


比較用ワークステーション:既存ワークステーション製品

  • デュアルコアCPU @ 3.60GHz (8Cores, 24.75MB Cache)

  • 64GB DDR4-2933 MHz RDIMM ECC

  • NVIDIA Quadro RTX 8000 48GB GDDR6 PCIe 3.0

  • 1TB SATA HDD

  • 512GB M.2 PCIe 3.0 NVMe

図:「ThinkStation P620」と従来機種(デュアルプロセッサー搭載のワークステーション)のベンチマーク結果

自動車業界向け検証:ビジュアライゼーションソフトウェア「Autodesk VRED」の評価

  • SAMSUNG 4K LEDディスプレイ「The Wall」への投影(リアルタイムレイトレーシングあり)

  • GPUレンダリングおよびCPUレンダリング時にリアルタイムレイトレーシング+グローバルイルミネーション+アンチエイリアシング設定時の従来機種との操作感の違い

  • Varjo VRヘッドセット「XR-3」での投影(リアルタイムレイトレーシングなし)

<検証結果>
  • 従来機種と比較してレンダリング時間が1/10程度に短縮。視点移動や正確なCPUレンダリングを活用可能

  • XR-3はセンサーのデータの受け渡しのために非常に厳格なスペックを求められるがP620では問題なく動作した

建設業界向け検証:Cloud Compare stereo による点群データのビジュアライゼーション

  • 静岡駅近辺の2種類の点群データ(全体で16GB)を可視化

  • P620と従来機種における操作感やLOD(Level Of Detail)を生成する際の処理時間の比較

  • 立体視表示のナビゲーションFPS(フレームレート)の比較

<検証結果>
  • 従来機種と比較して、可視化の処理時間は3分の1から5分の1程度に短縮

  • 視点移動した際のローディング時間が短縮され操作ストレスが大幅に軽減

  • 従来機種ではFPSが0.1程度であったが、P620では約20倍のパフォーマンスに


コストと性能を両立する、AMD Ryzen Threadripper PRO プロセッサーを搭載の「ThinkStation P620」

検証を実施した株式会社エヌジーシー ビジュアルソリューション事業部 XR技術担当部長 Kevin Chiu氏は、P620について次のように評価しました。

「P620はAMD Ryzen Threadripper PRO プロセッサーを使った唯一のワークステーションです。CPUは64コア、メモリのスレッドが8チャンネル、PCIeスロットも第4世代となっていて、高いパフォーマンスを実現しています。

Autodesk VREDのリアルタイムレイトレーシングはGPUも対応していますが、リアルな光の反射などはCPUのほうが向いています。建設関係の点群データについては、GPUではなかなか加速できないので、メモリからデータを取り出してCPUで並列処理できるP620はとてもいいマシンだと評価しています。

GPUはNVIDIA RTX A6000を搭載可能ですので、インタラクションを求める場合でもテクスチャの表現などもいいですね」(Chiu氏)


優れたCPUのほか、バランスの良い構成となったP620は、ビジュアライゼーションに必要なスペックを満たしながら、表示データが重くても実用に耐えうるとChiu氏は評価しました。CPUはシングルですが、コア数が最大64でクロック周波数も高く、デュアルプロセッサー構成の機器と同等以上の性能を持っているため、高いコストパフォーマンスを実現します。スペックに対して筐体がコンパクトなため、オフィスでも邪魔になりにくい点もメリットです。

「お客様のところに機器を運んでデモンストレーションする際に、機器がコンパクトだと運搬が楽になります。また、P620は静音性も魅力の1つです。コンパクトさと高性能を兼ね備えている点でもP620はいままでになかったワークステーションだと感じます」(Chiu氏)

今回は、Chiu氏に加え、株式会社エヌジーシー ビジュアルソリューション事業部 XR推進課 課長の中山 真 氏、レノボ・ジャパンでSMBビジネス開発部の部長を務める小林 涼介、シニア・プロダクトマネージャーの高木 孝之の4名による対談を行いました。テーマは、自動車業界や建設業界におけるビジュアライゼーションです。以下、対談のエッセンスを問答形式で報告します。

自動車業界における3Dビジュアライゼーションのメリットとは?

レノボ・小林:エヌジーシーでは、どのような事業を展開されていますか?

エヌジーシー・中山氏(以下、敬称略):大きく分けて2つの事業部があります。1つは放送局やCMなどを制作する映像制作会社(ポストプロダクション)向けのシステムソリューションを展開している部門です。もう一つはLEDやプロジェクター、VRなど映像表示に係るシステムを提供するビジュアルソリューション事業部です。主に自動車会社のデザイン部や建設関連会社などとお付き合いさせていただいています。

レノボ・小林:まず、自動車業界についてお聞かせください。今回評価された「Autodesk VRED」(VRED)をお使いのお客様は多いのでしょうか?

エヌジーシー・Chiu氏(以下、敬称略):自動車業界での採用が非常に多い印象です。3DCADのデザインからレンダリングするにはいくつかの手順があるのですが、VREDの中で統合されており、複数のソフトを学習しなくても、VREDの操作を覚えるだけで、さまざまな表現ができます。見た目の評価やVR対応などのニーズに応えており、現在利用が進んでいます。

レノボ・小林:VREDでは、それなりにマシンスペックも要求されるのでしょうか。

エヌジーシー・Chiu:綺麗さや正確さを求めると、どうしても処理スピードがトレードオフになってしまいますが、P620のようなハイパフォーマンスワークステーションの登場により、VREDの能力を引き出せる快適な環境が整ってきたと感じています。

レノボ・高木:昨今の自動車業界でのデザインレビューは、どのような環境で行われているのでしょうか?

エヌジーシー・中山:自動車業界では、クレイモデルでのデザインレビューを行ってきましたが、非常に手間とコストがかかります。すべてデジタル化とまではいきませんが、3Dビジュアライゼーションによってトータルなコストを最適化できるようになっています。

エヌジーシー・Chiu:3Dビジュアライゼーションのメリットは、すぐに変更前後を比較できること、VRを使って空間の感覚を伝えられることです。質感や光の具合なども確認できます。

レノボ・小林:今回、VREDの検証はどのように行われましたか?

エヌジーシー・Chiu:SAMSUNGの4K LEDディスプレイ「The Wall」に投影しながら自動車のデザイン検討するシーンを想定し、ある程度のフレームレートを保つインタラクションを検証しました。デザインデータはVRED に用意されているものを使いました。4Kなので、リアルタイムレーレイトレーシングをしようとすると、どうしても動作が重くなります。

VREDを使用し、The Wallに投影された自動車。内外装はもちろん、ネジ1本に至るまでリアルに表現されている

レノボ・小林:自動車メーカーの多くは、The Wallのような大きなディスプレイを導入されているのでしょうか?

エヌジーシー・中山:実寸サイズを評価するために、幅6m、高さ3mほどの大型ディスプレイを導入されるケースが多いです。以前はプロジェクターを使って部屋を暗くしないと評価できなかったのですが、現在は明るいLEDが登場していますので、LEDディスプレイに移行しつつあります。

エヌジーシー・Chiu:外装はディスプレイを使いますが、内装に関してはヘッドマウントディスプレイを使って評価することが多いです。

エヌジーシー・中山:より綺麗な映像を表示できれば、正確さが増します。自動車のデザインの段階で、非常に高い精度を求められますので、正確さを高めようとすると、高性能なワークステーションが必要になります。

エヌジーシー・Chiu:P620は全体的なバランスが良く、ボトルネックがない印象です。負荷の高い処理もスムーズにできましたので、検証結果にはすごく満足しています。

レノボ・小林:自動車メーカーがP620を導入するメリットをどのようにお考えですか?

エヌジーシー・中山:コストパフォーマンスではないでしょうか。アプリケーションが変わると業務の仕方に影響が出ますが、ワークステーションが変わる分には、操作方法は変わりません。ですから同じアウトプットレベルができるのであれば、おのずとお客様は価格メリットを優先します。

レノボ・高木:CAE(Computer Aided Engineering)に活用されるお客様からも、処理時間がだいぶ減ったというお声をいただいています。性能の高いマシンが数多く導入されると、自動車業界の業務内容が変わっていくのでしょうか?

エヌジーシー・中山:労働人口が減るなかで、AIなどを活用した合理化を検討されています。例えば、以前はドアだけのデザインを担当していた人がいるかもしれませんが、今は優秀な人材がデジタル活用で広範囲な業務を担当していかなければならなくなります。そんななか、各社がアイデンティティを出していくためには、ハイパフォーマンスワークステーションは非常に重要になります。

点群データの活用で建設業界の3Dビジュアライゼーションがより高精細に

レノボ・小林:では、エヌジーシーでは建設業界向けに、どのような環境を提供されていますか?

エヌジーシー・Chiu:ビジュアライゼーションをサポートする環境を提供しています。BIM(Building Information Modeling)データは非常に詳細なデータですので、そこからポリゴンを作って3Dビジュアライゼーションすると、変換ソフトウェア自体がうまく動かなくてクラッシュすることがあります。自動車のデザインよりもデータが重いため、3Dビジュアライゼーションでのリアルタイムのレンダリングは高い処理能力が必要となります。

エヌジーシー・中山:3Dビジュアライゼーションでは、床や壁をマーキングして、立体視付きのメガネで、物が浮き上がって表示できるような仕組みになっています。左右の眼をそれぞれ映像化しなければならないので、通常の倍の処理がかかります。

レノボ・小林:点群データはどのように使われていますか?

エヌジーシー・Chiu:点群データを用いて、すでにある建物を3D空間に再現します。点群データはGPUで加速できないので、CPUとメモリとSSDの流れが重要になります。そこでP620のThreadripper PRO プロセッサーや最大1TBのメモリが役立ちます。今回の検証では、比較対象の従来機種と比べてフレームレートが20倍という結果が出ました。ゲームパッドを使って空間をリアルタイムに動かすのですが、従来端末ではほとんど動かず、実用性はありませんでした。

点群データを活用し静岡駅周辺の街並みをデータ内で立体的かつウォークスルーに再現


レノボ・高木:建設分野ではVRがよく使われていますか?

エヌジーシー・Chiu:建設分野の中でも病院施設等の設計でVRがよく使われています。手術室の設計において、手術の邪魔にならない動線はなにか、患者が心地よく過ごすにはどのように病室をデザインすべきかなど、医療関係者ならでは目線でデザインを落とし込みたいときに役立ちます。実際の建設にはコストがかかり、やり直しもしづらいことから、VRを使って実物に近いものを再現して検討していくのです。

レノボ・小林:ワークステーションの高性能化は、建設分野においてどのようなメリットをもたらしますか?

エヌジーシー・Chiu:DXの手段として、点群データは注目されていますが、実際に活用するとなると高いマシンスペックが求められます。ですが、高性能ワークステーションの登場で実用レベルまで来ている段階だと考えています。点群データをスキャンし、メッシュを分割することで、多種多様な分析に使えるようになりますので、その際にP620が大いに貢献すると思います。

デジタルツインによる製品ライフサイクル管理を実現

レノボ・高木:自動車や建設土木でも、デジタルツインの取り組みが強化されていくでしょう。その中で鍵となるのがリアリティとコラボレーションです。VR空間でも複数の設計者が共有することによって今まで生まれてこなかった新しいアイデアが出てくる可能性があります。例えば、NVIDIAから仮想コラボレーション製品の「Omniverse」を提供されており、P620が活躍できるプラットフォームだと考えています。そして、IoTと連携して製品のライフサイクルを管理していくためのプラットフォームとしてもデジタルツインが役立ちます。

エヌジーシー・Chiu:Threadripper PRO プロセッサー搭載はP620の一番の目玉だと思っています。またPCIeスロットは80レーンあって、GPUを2枚挿せるなど、非常に素晴らしいマシンです。

レノボ・高木:P620は処理速度だけでなく、冷却や可搬性についても高い優位性があるため、デジタルツイン時代に合ったコスト効率の良い機器だと自負しています。

エヌジーシー・中山:自動車業界や建設業界にとどまらず、今後ビジネス用途でのビジュアライゼーションは広がっていくことが予想されます。引き続き、レノボの製品も含めて、最新の技術や製品をお客様に提案していきます。

レノボ・小林:P620は、CPUのコア数も12から64、GPUも、NVIDIA GeForceからNVIDIA RTX A6000まで選択できます。ユーザーの作業やアプリケーションによって幅広いニーズに対応できる製品だと思っています。エヌジーシーとの協業によって、レノボのワークステーションの活用提案を幅広く行っていきます。この度は検証をありがとうございました。


インタビューイー

Kevin Chiu氏
株式会社エヌジーシー
ビジュアルソリューション事業部 XR技術担当部長

中山 真 氏
株式会社エヌジーシー
ビジュアルソリューション事業部 XR推進課 課長

小林 涼介
レノボ・ジャパン合同会社
WS & クライアントAI事業部 SMBビジネス開発部 部長

高木 孝之
レノボ・ジャパン合同会社
WS & クライアントAI事業部 シニア・プロダクトマネージャー

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