導入事例

成城学園初等学校

小学校でChromebookによる1人1台に挑戦、“つながり”から生まれる新しい学び

導入について

Chromebookによる1人1台環境の実証研究に参加

東京都世田谷区にある成城学園初等学校は、自然豊かなキャンパスと特色ある教育が魅力の私立伝統校です。“基礎・基本をしっかり身につけ、さらに人間関係を深めていく場としての学校”をめざし、「遊び」「散歩」「つながり」「劇」「映像」「舞踊」など、他校にはない独自カリキュラムを設置。児童たちの成長を促す豊かな教育環境を築いています。


同校ではこれまで、映画・映像の授業において情操教育の一環としてICTを活用してきました。8ミリフィルムの時代から、映像編集に必要な機材の整備に力を入れ、コンピューターによる映像編集へと時代が変わった今は、MacBook ProやiPadを学校で共用しています。

秋山貴俊教諭(成城学園初等学校 ICT委員会委員長・社会科主任)

そんな同校において、Chromebookによる1人1台の実証研究に挑戦されたのが同校ICT委員会委員長・社会科主任の秋山貴俊教諭です。同教諭は1人1台の教育効果を検証する実証研究「RCP実証事業*」に参加され、その中で「Lenovo 500e Chromebook」を使用していただきました。

実証研究への参加について秋山教諭は、「1人1台に向けた動きが加速する中で、児童たちが実際にどのようにコンピューターを活用するのか、検証してみたいと考えていました」と述べています。わざわざパソコンルームに行ってコンピューターを使うのではなく、児童が常時使える1人1台という環境で、学びはどのように変わるのか。これからの教育を考えるうえで挑戦する価値があったというのです。


* RCP実証事業:NTTコミュニケーションズが提供する「まなびポケット」とChromebookを軸に、確かなデータに基づく学級・学校経営を実証するプロジェクト「Relational Classroom Project」

児童が選んで使える環境を重視し、“思考”や“相互理解”の時間を増やす

秋山教諭は受け持ちの6年生38名に対して、2019年11月から2020年3月まで、5ヶ月間の実証研究に取り組みました。最後は、新型コロナウイルス感染症による休校措置で学校での利用はできなかったものの、児童たちはChromebookを自宅に持ち帰って使用を続けたといいます。

同教諭がChromebookの活用で最も大切にしたポイントは、児童の自由な使い方を尊重し、学習の選択肢を広げようとしたことです。たとえば文章を書くとき、Chromebookでキーボード入力をする児童もいれば、音声入力を使う児童、または原稿用紙に手書きする児童もいるという具合。Chromebookを文房具のひとつとして捉え、児童が“選んで使える”環境を重視しました。

Chromebookを使った授業風景

「文章を書く目的は、きれいな字を手書きすることではなく、自分の気持ちを表現することです。そのねらいを達成するために最適な手段はどれか。児童が自分で考えて選べることが1人1台のメリットだと考えました」(秋山教諭)。

また社会の授業では、授業支援ツール「schoolTakt」を使って板書のスライドを配信し、黒板に書く時間と、児童がノートに写す時間を削減。それによって新しく生まれた時間で、児童同士の話し合いや感想の記述などを取り入れ、思考する時間を増やしました。

児童たちは、Chromebookに内蔵された電子ペンを使って板書のスライドに直接書き込んだり、また必要に応じてノートに記入したりと、自分に合った学び方を工夫したといいます。「手元のChromebookで板書スライドを見ながら、自分のペースでノートが取れる環境は児童にも好評でした」と秋山教諭は話してくれました。


ほかにも朝の会では、schoolTaktを用いた「朝ノート」の取り組みを実施。これは、クラス全員がその日の体調や気分、昨日の出来事などを自由に書き込み、共有するという活動です。一般的に朝の会といえば、日直の児童が一方通行で話すスタイルが多いですが、朝ノートは児童たちがメッセージを書き込んで共有することで、クラス全員の交流を目的にしています。

「児童たちが、その日のうちに全員とコミュニケーションをとるのは難しいです。ところが朝ノートでは、“あの子、こんなことを考えていたんだ”と普段あまり話さない子の個性がわかります。児童が互いに理解し、人間関係を深める活動につながると考えています」(秋山教諭)。

臨時休校措置期間も、Chromebookですぐにオンライン学習環境へ移行

秋山教諭の取り組みでさらに注目したい点は、Chromebookと親和性が高いクラウド型教育プラットフォーム「まなびポケット」を使用したことです。まなびポケットは前出の授業支援ツール「schoolTakt」や学級経営アセスメントツール「Q-U」のウェブ版「WEBQU」、個別デジタル教材「やるKey」など、多様な教育コンテンツをシングルサインオンで使用できます。

こうした学習環境は、授業だけでなく、児童らが学校行事を運営したり、学級活動を進めたりする上でも有効です。schoolTaktを活用して、グループ活動の情報共有や教師との連絡に利用するほか、自宅のコンピューターからもアクセスして学校の作業の続きを行うなど、児童たちの主体性に応えてくれるツールなのです。

また、新型コロナウイルス感染症による臨時休校措置期間においても、学びポケットの利用ですぐにオンラインによる学習や学級活動ができた点も見逃せません。秋山教諭は、児童たちにChromebookを自宅に持ち帰らせ、まなびポケットの「チャンネル機能」で連絡を伝達し、schoolTaktで社会科の学習も行いました。


またWeb会議システム「Zoom」を活用した朝の会にも挑戦。社会科の学習では、朝に課題を出して、午後に解説動画を配信し、それを踏まえて児童たちが修正した成果物をZoomで共有して意見交換を行うという、オンラインによる課題解決型学習を実施しました。単に、知識を伝達するオンラインに授業ではなく、“つながり”を感じられる学びの環境を活かしたというのです。

そして、このようなICTの活用は、WEBQUの結果にも表れています。実証研究開始前に実施したWEBQUでは学校生活満足が48%だったのに対し、Chromebook導入5ヶ月後、休校期間中に実施したWEBQUでは62%にまで上昇。全国平均と比べても高い数値を記録しました。

これについて秋山教諭は、Chromebookだけが直接的な要因とは言い切れないとしつつも、「休校の間も児童が1人1台の端末を使い、つながる環境を持てたことは大きいと思います。友達と顔を合わせられたこと、文字情報でつながれたことは、児童たちの安心感に寄与したと考えています」と話してくれました。

WEBQU「学校満足度尺度」結果のまとめ。写真左はChromebook導入前。写真右はChromebook導入5ヶ月後、臨時休校措置期間中にWEBQUを実施した。右上にいくほど満足度が高くなる。秋山教諭のクラスは満足度が48%から62%まで伸びた。


校内を自由に持ち歩ける、Lenovo 500e Chromebookの軽さと丈夫さが魅力

このような形で5ヶ月間、 Chromebookを使用した秋山教諭ですが、そのメリットは何でしょうか。

ひとつは、起動が早く、使い方が簡単な点だといいます。「Chromebookを開き、使いたいアプリを選んで作業に取り掛かるまで、ストレスもなく、児童にとっても分かりやすい」と秋山教諭。

またLenovo 500e Chromebookについては、“軽くて丈夫であること”、“タッチペンが使えること”を評価いただきました。同教諭の授業では、児童による自由な使い方を尊重しており、作文を書く活動についても教室に留まらず、図書館や廊下など校内の好きな場所に移動して書く児童もいます。そうした際に持ち運びしやすく、丈夫であることは重要だというのです。

校内のあちこちでChromebookを使用する児童たち


「児童が机から2回ほど端末を落としてしまったことがあるのですが、それでもLenovoのChromebookは何の故障もなく使うことができました。

この丈夫さは学校現場にとってはありがたいです。また文字を書く、計算をする際に内蔵式の電子ペンを使う児童も多いのですが、きちんと書けるのがいいですね。電子ペンは紛失の心配もありますが、学校として扱いやすい価格帯なのもありがたいです」(秋山教諭)

もうひとつ。Chromebookの活用で心配なのは、小学生のキーボード入力ですが、これについても秋山教諭は問題ないといいます。

「確かにタイピングが苦手な児童もいますが、私の授業では常に自由に使える状態にしたので、使用頻度も高い状態でした。

そのような使い方ですと、タイピングソフトでトレーニングしなくても、児童たちのタイピングはいつの間にか早くなりました」(秋山教諭)。

日常的に使うことが、情報活用能力の育成においても大切だといえます。


管理コンソールで安心・安全な環境を構築し、情報リテラシーを伸ばす教育へ

一方で、情報リテラシーが発達段階にある小学生の1人1台について、不安に感じる教育関係者の方もいるでしょう。その点、Chromebookの場合は、「管理コンソール」で児童の端末を一元管理し、安心・安全な環境を構築できるので心配ありません。

とはいえ、秋山教諭は児童たちが学校という安全な場所で失敗することも、大切な情報リテラシー教育のひとつだという考えをお持ちです。がんじがらめにChromebookの機能を制限してしまうのではなく、児童たちが失敗したときこそ教育の機会だと捉えることが重要だというのです。

「授業支援ツールへの書き込みやコメントの記入など、最初のうちは児童たちも不適切な発言や言葉づかいをしてしまいます。しかしその都度、“これは、どこが悪かったのだろう?”、“自分が同じことをされたらどう思う?”と問いかけることで、児童たちも適切な使い方を考えるようになっていきます。

こういう指導ができるようになった点が今までとの大きな違いで、情報リテラシーも1人1台だからこそ育つと実感しました」と秋山教諭は語ってくれました。


今後の取り組みについては、2020年度も引き続き実証研究を継続し、さらに個別最適化学習の検証にも力を入れていきたい考えです。

「1人1台の環境になると、個別最適化学習が進むと思いますが、児童たちのモチベーション維持・向上が大きな課題になると考えています。そこに教師がどのようにアプローチできるのか挑戦していきたいです」(秋山教諭)。

Chromebookによる1人1台環境は、場所にとらわれない学びや、双方向の学びを実現し、新たな価値を教育現場にもたらします。その恩恵を児童たちが受け、未来の生きる力となるように、ICT活用を進めている秋山教諭の姿が印象的でした。

「児童生徒の意識向上とともに、教師が如何にその環境を創り出すかが重要」

成城学園初等学校
ICT委員会委員長・社会科主任
秋山 貴俊 教諭

この課題を解決した製品・ソリューション

  • Lenovo 500e Chromebook

    ペン入力に対応した教育向け回転型マルチモード2 in 1
    ・インテル® Celeron® プロセッサーとChrome OSを搭載
    ・360度回転するヒンジでフレキシブに利用可能
    ・落下テストをクリアした堅牢ボディ
    ・本体内蔵式のLenovo 電子ペンを添付

関連導入事例